「被殻出血よろしくね」って言われても、どの脳画像見たらいいの?
「これ脳画像ね…」って言われて、わかったフリをするのがつらい
「後輩ができるのに私で引っ張って行けるか、不安…」
と悩まれたことはないでしょうか?
被殻出血は、臨床現場で一度は見るほど、高い確率で起こる病気の一つ。
脳出血の全体の8割は、高血圧より発症していると言われますが、なんとそのなかでも被殻出血の確率はNo.1。
※高血圧性脳出血の好発部位:被殻(40%)、視床(30%)、小脳(7%)・橋(10%)他(13%)
そこで、この記事では「評価に差がつく|被殻出血の脳画像を簡単に見る方法」を解説します。
あなたは、この記事を読むことで、
- 被殻出血患者の脳画像を見ることができ、治療に入る前から戦略を練ることができるようになったり
- 「この治療は必要ないよね…」と予後予測が行え無駄な治療を省くことができたり、
- 実習生に「これが被殻だよ。」と丁寧に教えることができ、「この人スゲー!」と尊敬されるようになるでしょう。
とにかくわかりやすく解説しているので、安心してみてくださいね。
※この記事は、被殻出血がめちゃくちゃ簡単に見つけれるようになる記事です。
なので、応用だけ知りたい人や論文だけ知りたい人には、不向きのコンテンツになっています。
ですから、土台の基礎を身に着け、治療ができるようになりたい人以外は読まないでください。
▼注意
今回のコンテンツは、とにかく「わかりやすさ」を重視して解説しています。
また、このコンテンツは、「新入職セラピスト」や「後輩ができるセラピスト」、「実習に向かう学生向け」に作成しています。
本質的かつ、今後の治療に応用が利きやすい内容となっているので、近道を通りたい人のみ読み進めてください。
記事の信頼性
私は研修会や勉強会で200万円以上溶かした、理学療法士8年目。
回復期・維持期・訪問リハビリや転倒予防教室を経験し、新人教育にも携わりました。
被殻出血に関与する大脳基底核ループについて詳しく知りたい人は、大脳基底核ループをわかりやすく解説|臨床で使える被殻出血の治療法で解説しているので、あわせて読んでください。
目次
被殻出血の画像をさっそく見よう
それでは、さっそくですが、被殻出血の脳画像を見てみましょう。
どうでしょう?わかりましたか?
「いや、わからん…。」
「多分白くなってるところだよね…」
と不安に思うでしょうが、心配しなくても大丈夫です。
この画像は、最後にもう一度見ます。
勉強熱心なあなたなら、最後には「ここにあるでしょ!」
と自信をもって言えるようになっているので、安心して読み進めてください。
まずは、被殻出血と言われたときに、どの画像を選ぶべきなのかについて解説しますね。
脳画像の種類
まずは、脳画像を選ぶ作業です。
画像の種類を知らないと、どの画像を見ればいいのかわからなりません。
覚えなくていいので、どの画像だったかなと選べるように特徴を知っておきましょう。
画像の種類はつぎのとおりです。
▼画像の種類
- CT
- MRI【T1強調画像】
- MRI【T2強調画像】
- MRI【拡散強調画像(DWI)】
- MRI【FLAIR】
- MRI【T2*】
「画像多いな!」
「こんなに覚えないといけないの?」
って思いますよね(笑)
でも、覚えなくて大丈夫です。
実際に脳画像を見る前に確認すればいいだけなので、気張りすぎずに学んでください。
詳しく解説しますね。
CT
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4 より引用改変
まずはCTです。
CTは「出血病変」の検出に有効で、出血部分が白く写ります。
とにかく簡易に、早く使えるのが特徴の画像です。
梗塞部は一応黒く写りますが、見えずらいので、基本的に「脳出血」の判断に利用されます。
MRI【T1強調画像】
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4 より引用改変
次はMRI【T1強調画像】です。
MRI【T1強調画像】はCTと同様な写り方をします。
CTとの違いは、脳髄液は黒く写るところ。
解析度がCTに比べると精密なので、脳の構造の理解しやすいのが特徴です。
なので、形態評価によく使われやすい画像でもあります。
CTと同様で脳出血は白く、脳梗塞は黒く写る。
MRI【T2強調画像】
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4より引用改変
次は、MRI【T2強調画像】です。
MRI【T2強調画像】は、脳梗塞の診断に有効です。
脳梗塞が発生した部分や脳室部分は、白く映ります。
今回のコンテンツでは解説しませんが、脳梗塞と診断されたときには、T2画像を見ましょう。
MRI【拡散強調画像:DWI】
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4 より引用改変
次は、MRI【拡散強調画像:DWI】です。
MRI【拡散強調画像:DWI】は、超急性期~急性期の脳梗塞診断時に有効です。
脳梗塞発症から6時間以内であれば、診断できる確率90%以上。
頭蓋骨が映ってない画像で、くっきり見にくいのが特徴です。
超急性期~急性期で、脳梗塞を見たい場合は、まず頭蓋骨が写ってないディフュージョンを見ましょう。
ちなみに、新しい脳梗塞は白く、古い脳梗塞は黒く映ります。
MRI【FLAIR】
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4より引用改変
MRI【FLAIR】は、古い病変から新しい病変まで見るときに有効です。
T2強調画像の脳室を黒くしたバージョンで、脳梗塞部分だけが白く映るので、T2よりも明確に見えやすい。
過去に起きた脳梗塞を見たい人は、FLAIRも見ておくとOK。
MRI【T2*】
久松正樹,脳梗塞.重症集中ケア V olume.19 N umbe r. 4 より引用改変
MRI【T2*】は、過去の微少の脳出血を見るときに有効です。
脳出血を見る場合は、CTのほうが優れているが】であれば微少の出血を見るのに役立ちます。
「ちろちろと出血が出ている」=脳出血ハイリスクであることが分かってしまう画像。
ちなみに出血部分は黒く映ります。
被殻出血を見るなら、とりあいずCT
「画像多すぎ」「こんなに覚えれない」
と、悲観的になるかもしれませんが、被殻出血の脳画像を見るなら、とりあいずCTを見ましょう。
CTは簡単に撮影できるので、だいたいどこの病院でも撮ってくれます。
また、覚えるのが大変と思うので、この2つを覚えておけばOKです。
▼覚えておくと楽なこと
「出血を見るとき」は、CT。
「脳梗塞を見るとき」はT2画像。
とりあいず、この二つは覚えておけば、らくちんです。
もっと詳しく知りたくなったり、余裕が出てから残りの画像もチャレンジしてみてください。
頭の上から脳画像を見てみよう
脳画像を見るとき、上からどんな構造があるのか?を知っておくことはとても重要です。
なぜなら、どこを見たらいいかわからないから。
被殻を探したいのに、迷子になっていては、何を見ていいのかわからなくなります。
まずは、上記の写真はどんな画像か何となく見てください。
上記の写真は、左上が1番上の部分の頭頂部。
で右に行くにつれて、徐々に下に降りていきます。
また、脳画像を見るときは、左右で見え方が逆になります。
脳画像の
左に移っているのが「右脳」
右に写っているのが「左脳」
足元から画像をとっているため、左右は逆になってしまします。
左右間違えると症状も変わってくるので、注意してください。
ちなみに、ここでは、脳の構造が分かりやすい「T1強調画像」を使っています。
大脳基底核の見つけ方
では、大脳基底核をT1画像を使って探していきましょう。
ちなみに被殻は、このスライスを見ていきます。
ここからは、あなたも画像を見れるようになるようにポイントをお伝えするので、しっかり脳に叩き込んでくださいね。
大脳基底核の見つけ方|点を打つ
大脳基底核を見つけるときのポイントは、「点」と「線」を書くことです。
あなたも今日から簡単に見つけることができるので、点を打つ場所を理解してください。
まず「側脳室」の端と端に点を打ちます。
「端っこってどこ?」
「ここで良いのかな?」
と不安にならなくても大丈夫です。
「ここらへんで良いか?」
くらいの感じで、点を打ちこんでも大失敗しませんから。
側脳室に点を打ち込み終わったら、次は上記の画像のように、「ハの字」になっているところの終わりに点を打っていきます。
次は、脳みそのしわの部分に沿って点を打ちこみます。
はい、もうほぼ終わりです。
あとは上から順番に線でつなぎます。
そして最後が少し難しい。
しわに沿って線を描いたところに三角を作ってあげます。
これで終わりです。
では、最後に場所の説明をします。
上記の画像のように、
側脳室のすぐ近くが尾状核、その下が視床。
そして、三角になった場所がレンズ核【被殻+淡蒼球】です。
レンズ核でも、外側にあるのが、【被殻】は青色。
視床側にあるのが淡蒼球は紫色です。
そして尾状核やレンズ核の隙間にあるのが、内方の後脚。
内方の後脚には錐体路が通っているので、被殻出血患者さんは運動麻痺を引き起こしやすいんです。
とまたの機会に、運動麻痺がおこる脳画像をリリースするかもしれませんが。
被殻の見方は終わりです。
どうでしょう?
思ったよりも簡単ですよね。
あとは、あなたが脳画像をみて、とにかく何度も何度も画像を見ること。
真似すれば、あなたも確実に「被殻」の位置は分かるようになるので、とにかくたくさん見てくださいね。
また、いきなり出血部を見ると、出血によって、脳室がよってしまったり、大きくなっていることもあるので、
まずは、病変ではないところから見るようにしてください。
人によっては真ん中がづれてたり、脳室が大きくなったりいろんな脳がありますが、何度も繰り返し意識してみるとだんだんわかるようになります。
被殻出血の画像をもう一度見てみよう
それでは、最初に見た脳画像をもう一度見てみましょう。
ここまで勉強したあなたなら、もう被殻出血の脳画像が見れるはずですよ。
それでは、もう一度画像をみていきましょう。
どうでしょう?
初めにみたときより、画像の印象が全然変わってるでしょ?
では、左右で見比べてみましょう。
特に右脳は、視床や尾状核の影や内包が意識しただけで、とても見やすくなってると思います。
左脳は出血によって視床の形が潰されているような感じになっていますね。
では、この人はどんな症状が予測されるでしょう?
知覚障害は出現しそうでしょうか?
知覚障害と言えば、視床が有名ですよね。
視床は特に出血による損傷を受けていないので「知覚障害が出現しない。」
もしくは、脳出血初期は脳がショック状態に陥ることがあるので、知覚障害が重度かもしれません。
でも、損傷はしていないので、回復の見込みが高そうですよね。
そうなれば、知覚障害に対してのリハビリの練習の優先順位は低いかも。と評価できます。
しかし、被殻はしっかりやられているので、大脳基底核の4つのループは障害が出現しそうです。
大脳基底核の抑制機能がぶっ壊れているので、
- 運動の順番が変だったり
- 感情失禁やリハビリ拒否があったり、
- 食事もキョロキョロして食べれてないかもな。
と推察できます。
このように脳画像と機能解剖が分かっていれば、患者さんを診る前から様々な推察ができます。
「この知識を知ったあなた」と「知らない人」では評価の時点で差がつくし、治療するべき場所も変わるでしょう。
このように知識は知れば知るほど、使えるようになるし、あなたが早く試したくなっているようにリハビリも楽しくなってきます。
そして、あなたは患者さんの脳画像の評価が終わっているので、本当に必要なことに時間を割いてリハビリをできます。
無駄な治療を省いて、本当に必要な治療が分かれば、患者さんに喜ばれるのも間違いなし。
少しずつ成長を感じれるように、楽しみながら学びましょう。
参考書籍
国家試験にも臨床にも役立つ ! リハビリPT・OT・ST・Dr.のための脳画像の新しい勉強本
この書籍で勉強すれば脳画像が見れるようになり評価で差をつけることができます。
リハビリで頻出な運動麻痺や知覚障害、半側空間無視など医学博士を取得したリハビリテーション医の粳間Drが分かりやすく解説してくれています。
無償ダウンロードできる画像があり、「脳画像をこれから勉強したい」人だけでなく、「勉強会を開きたい」人にもおすすめの書籍。